日本海を回遊するようにじっくりと進むこと数日。
近頃は甲板に出ると少しばかり暖かくなったように思えるのは、西に近づいてきたという気のせいなのだろうか?
「おはようございます。大佐嬢」
「おはよう。ご苦労様──」
その日の朝も食堂に向かう途中で、幾人もの隊員から朝の挨拶と共に敬礼をもらう。
葉月も敬礼を返し、きちんと漏らすことなく隊員達に応える。
「もうすっかりクルー達の大佐嬢という感じですね。余所から来た上官という彼等の距離の置き方がなくなってきたと感じていますよ」
「それはテッドもでしょう。クールで切れる青年少佐と言われているわよ」
「え、まあ……嬉しいですけど」
ちょっと照れたテッドを見て、葉月は少しだけ可笑しそうに笑いをこぼした。
葉月とテッドの後ろからはいつものようにテリーとクリストファーが楽しそうに話しながらついてくる。
「テリーもちょっと寂しい頃かしら? 柏木君と離れちゃって」
「顔には出しませんけどね。柏木も彼女もどうだって私にもみせないし、当然、職場では匂わせないスタンスみたいで? 大佐と澤村中佐を見習っているのでしょう。でも、まあ……上手く行っているみたいですよ」
『見習っている』の一言に葉月はちょっと頬を染めた。
「なんか申し訳ないわ。この前、メールさせてもらっちゃったの」
「いいじゃないですか。あれは貴女の気持ちの確認だったのですから。──でもやっぱり送っちゃったのだな〜なんて」
頑なな大佐嬢も、ついに送った。と言いたそうなテッドのニンマリからかい笑顔に、葉月はさらに顔が熱くなっていくのが分かった。
「だあって。教官が送れというから……」
「はいはい、そうですね。恩師の言うことは聞いておかないとですね〜」
やっぱりからかい加減なテッドの面白がっている言い方。
葉月はちょっとふてくされる。
でも──あれから、あの時に心を覆いかけたどろどろとした渦巻く衝動はすっかり消え去っていた。
自分の中の正直な気持ちを再確認できたのも、あのメールを送った……と言うより『書いた』からだ。書くことで自分が心に定めてきた大事なことを再確認出来たと思う。
彼のところに絶対に、自分で帰る。彼を一人置き去りにして、二度と何処かに行かない。どんなことがあっても、起きても!
その気持ち──。その気持ちが心を大きく包み込んだから、さあっと心が晴れていくのが分かった。
だから、あれからもずっと順調の日々を送っていた。
「おはようっす! 大佐」
「おはようございます。大佐!」
元気に挨拶をしてくれる隊員が二名。
顔をみると、先日、葉月を殴ってしまった若い青年達だった。
「おはよう。あら? 夜勤だったの?」
彼等は機関室の整備員だ。
そのベージュ色の作業着が油で汚れていた。
葉月の予想通りに二人の青年は『はい』と笑顔で答えてくれた。その夜勤が明けて交代したばかりだそうだ。
「良かった。頬の赤いのもうすっかり引きましたね」
「もう、大佐嬢が湿布を貼っている間は、俺達、顔あげられなくて」
「大袈裟よ。気にしないでと言ったでしょう」
あれからこの青年達は、葉月の顔を見るとちょっと気後れした顔になるのだが、必ず側に来て挨拶をしてくれる。
そして葉月の毎度のその言葉を聞けば、彼等らしい若々しい笑顔に戻ってくれる。いつもここで終わらずにテッドやテリー、クリストファーも交えてちょっとの雑談もお決まりになってきた。
彼等は今から朝食なのだそうだ。それを取ったら仮眠に入るとのこと。職務を終えた充実感を笑顔に滲ませ、食堂へと向かっていった。
「彼等もすっかり貴女のファンみたいで」
「なによ、勝手に決めないでよ」
「しかし、あの時の大佐は彼等に対してはお見事だったというか……」
「だって……良くある話を上官を殴ったと言うことでいちいち大事にするなんて」
「まあ、そうですけどね。その後の艦長の対応も良かったのでしょうが。ああして彼等が上手い具合に反省し、さらに職務に向かえるように管理するということは、大変ですよね」
葉月もそこは今回、ジェフリーの姿からとても感じていた。
今回、この航行に来て一番得られそうなものは、恩師の姿から見せられる『司令官とはこうあるべき』という新しい課題の答だった。
しかし葉月は、偶然に殴ってしまった青年達をみるたびに思う。
時々、何故殴られたぐらいで気を失ったのだろうか? と振り返る。
あれぐらいなら、痛くて起きあがれなくても『気を失う』なんて──今までの喧嘩でもあっただろうか? 葉月は腫れがすっかり引いた頬をさすってみる
そりゃ、思いっきり殴られたら気を失う時もあるだろう……。
けれど、覚えているのだ。殴られて自分が男の力で軽々と飛ばされ、そして数々の椅子をなぎ倒しながら自分が床に豪快に叩きつけられるように倒れた『衝撃』を。勿論、『凄く痛い!!!』と久々の感触を思い出した。痛いのは頬だけじゃなく、冷たい床に叩きつけられた頭も、そして腰も背中も──。最後にその冷たい床に頬が付いたのも覚えている。『喧嘩はどうなった? テッドは?』──そう思って視線を彼等の方に向けた。そしてそこで見えたのは、とても大きく見える『男達の群れ』だった。彼等が我を忘れて、人間の本能の赴くまま、恐ろしい形相を揃え燃え上がっている激しい姿。──それが目の前で起きていることなのに、なんだかとても遠く見えた。そして、葉月の心の中ではとても『近く』感じた。
そこまでは覚えている。そしてその後……。なにか……。
頭痛が起きた。
どうしたのだろう?
近頃、こうして時々頭痛が起きる。
こめかみの血管がドクドクと脈を打ち、脳天を突き上げるかのように。
「大佐……? どうしました?」
「ううん。いつもの……」
「またですか」
テッドには『最近、頭痛がする』と言ってある。
だから彼がちょっと心配そうに葉月を見下ろした。
「アスピリン、持っていますか? 先生からもらってきますよ」
「うん。持っているけど……」
だが、いつもそう言っている内に治まる。
「もう痛くない」
「疲れが出てきたのでしょうかね?」
「そうなのかしら。よく寝ている方だと思うけど」
「テリーから聞きましたよ。貴女より後に寝付いたことがないと……。テリーが目を覚ますと、貴女はいつも起きていると」
少し離れてついてくるテリーへとテッドはそっと振り返る。
いつもマイペースで明るいクリストファーの冗談に、いつもはクールに落ち着いているテリーもすっかり心を許しているのか明るく笑っていた。
そうなのだ。どういうことか、テリーが『いつも大佐より先に寝てしまう』と妙に気にしていることがある。彼女は葉月と違って内勤専門隊員だ。パイロットとして外勤を積み重ねてきた葉月とは、こういう母艦での過ごし方には差が出て当然なのに。
「だから、テリーにも言ったけれど。航行に出たらそうなのよ。私だけじゃないわ。一緒に乗船していたコリンズ中佐にフランシス大尉だってそうだったんだから。彼等の影響よ。きっとミラー中佐だってそうだと思うわ。スクランブルはいつ来るか分からないもの。精神を落ち着け身体を休めるのとは別に、いつだって起動できる訓練をしてきたのよ──」
パイロットなら当然だ──という話を、葉月は訴えるように言う。
そうするとテッドも内勤専門隊員。そこは外勤という下積みをしてきた葉月の経験には言い返す言葉もないようで『そうですか』と、腑に落ちないようだがとりあえず納得してくれた。
さあ、まずは腹ごしらえ。
今日もトーマス艦長の精神力を要する厳しい訓練が待っている。
そう言い合いながら、食堂に入った時だった。
艦内にある数々のスピーカーが騒々しい音を発生。
それは食堂にあるスピーカーも、そして通路にあるスピーカーも。艦内の全てのスピーカーが全てけたたましい音を出していた。
その音は『警報音』だ。
『スクランブル発生。国籍不明機を確認。国内空域を侵入。各部署、スクランブル形態を発令!』
中枢管制員のアナウンス。
食堂にいた誰もが顔色を変え、席を離れる。
食べていた途中の者も、今から食べようとカウンターに並んでいた者も、皆、片付けもしないで持ち場にすっ飛んでいく。
勿論、葉月達もそのまま管制室へと走り出す。
皆が騒々しいアナウンスに急かされるようにして慌ただしく飛び出していった後の食堂のテーブルには食器やトレイが散らばったままだろう。
既に各持ち場には充分な人数配置はされているが、だが、休憩に入ったとて場合によっては人手がいることもある。だから仮眠状態でない限り、そこを放ってでも持ち場に向かっていくのがクルーの使命だ。
葉月もテッドも、そしてテリーもクリストファーも、揃って通路を駆け抜ける。
時には自分たちとは反対方向に全速力で走っていく整備員もいる。
「なんか最近、多くありませんか──?」
「あるのよ。この地域は。おそらく今、私達が一番近い位置にいるからスクランブル指令はまっさきにキャッチ出来る位置にあるのよ」
「大佐が昔、良く鉢合ったというところなのですね?」
そうなのだ。葉月が新人パイロットで空母航行の任務にデイブと出ていた時は、ここで訓練中に鉢合った時もあったし、待機中でもスクランブルを良く体験した地域だった。日本海は空域線が入り交じっている地域だ。こちらも接近には気遣う。こちらが接近しかけるとあちらも様子見にうかがいに来るだろう。たったそれだけのことでも『スクランブル』になる。そういう緊迫した地域で、特にジェフリーは西に向かうほど緊張感を募らせ、葉月にも何度か釘を打っていた。
『いいか。葉月。そんなことはないと思うが、万が一、俺が管制室不在の時はお前が最高司令官だ。いいな』
それ故に近頃の訓練では『いかにパイロットと疎通しながら、冷静な対処が出来るか』が重点だ。
そしてそれがジェフリーが葉月に受け継ぎたい一番の事なのだろう。
だから、小笠原でそうしていたような激しい接戦や戦術の訓練という緊張感以上に、相手との無言の駆け引きをして『防衛する為』の緊張感を伴う精神力を要する訓練が続いていた。
それだけこの地域への警戒をしていたことになる。
さらに余談だが、いつか葉月が対国機とニアミスしたのもこの地域。デイブを守りたくて命を投げ出し、帰還後、デイブにも妻のサラにも頬を叩かれる叱責をされた事件が起きたのも、この区域だ。
なので『あるだろう』と思っていたが、ここ数日割と頻繁だった。
「まさか今、国交情勢のバランスが崩れているせいじゃないでしょうね」
テッドのふとした社会見解。
確かに今、メディアではそこが注目されている時期に当たっているかも知れないが、それも常にあることで、葉月はそこまでとは思わない。だが、一概に『まさか』とは言えそうにもない頻繁さだった。
「艦長──! 只今!」
大佐嬢一行が管制室に辿り着くと、既にジェフリーが陣頭に立ち、甲板では湾岸部隊が全機飛び立った後だった。
「遅くなりまして、申し訳ありません」
「いいや。昨日のように直ぐに帰ってこれる程度だろう。あちらさんも、こっちが見えたら消えていくからな」
ジェフリーは落ち着いていた。
それに慌ててきた葉月達を見て、可笑しそうに笑う余裕さえあった。
『空域線、到着──』
管制員の報告。
笑っていたジェフリーだが、そこはそうは思っても何が起こるか分からない。途端に表情を引き締め、なんとか無事にやり過ごそうという緊迫感が漂い始めた。
『湾岸1。接近──』
『湾岸2。接近──』
機材や通信機の各音が響くだけの管制室。静かではあるが皆の緊張した熱が溢れている。
そこに淡々とした管制員の報告が響く。
『国籍不明侵入機、空域線、後退──』
そこで皆がほうっと緩んでいく空気が管制室に広がった。
レーダーを見据えていたジェフリーもホッとした顔。そして『空域線を刺激しない程度のパトロール命令』を出し、暫くすると『着艦命令』を出していた。
葉月もそこでホッとする。
この状態がここのところ続いていた。
だが葉月はそんな緊迫感を感じながらも安堵していた。
自分もそこは何度も経験してきた区域だ。一般社会からは見えない世界で非日常な出来事ではあるが、それでも現場にあたっている隊員、そしてパイロットとしては日常茶飯事の職務。
それ程度のこと。特にこの空域なら、それすらも当たり前の事だと思っていた。
・・・◇・◇・◇・・・
そしてこの日、ジェフリーが『今日は訓練を休もう』と言い出した。
「悪いな。葉月もちょうど指揮に波が乗ってきたところだと俺も思っていたのに、残念だな」
補佐を含めたいつもの人数でラルフのお茶を手にしながら、一息ついていた時だった。
艦長席で、ジェフリーが残念そうに呟く。
「いいえ。実務中にお邪魔していたのですから、こういうこともウォーカー中佐とは予想済みですし、連れてきたパイロット達にも『途中下船』があることも念頭に置くように説明してあります」
「そうか。まあ、そこまではまだ言わない。だが葉月の方がこの区域については分かっているはずだ」
「はい。確かに要注意区域です。それにこの状態になり、艦長の湾岸フライトはスクランブル専用のパイロットとして母艦で待機、私達の小笠原フライトだけ訓練のために空に出たとしたら……。もしスクランブルがかかれば、空にいる『実務外で乗船している、現に空に出ているパイロット』の方が確実に現場には素早く対応できますでしょう。ですけど、それは逆に問題です。正式に任務を言い渡されている湾岸部隊をさしおいて向かうわけにも行きませんし、かといって直ぐ応対出来る空にいながらスクランブルを見過ごすのもどうかという位置関係になりますし……」
そこをそう考えていたと話した葉月の顔を、ジェフリーが感心した驚きの顔で艦長席から見つめた。
「いや流石、大佐嬢──。実はそこなんだな。そういう問題も出てくるし、警備隊としてのパイロットを必要以上の訓練で消耗させることも控えたい。悪いな。言葉は悪いが『のんびり訓練』という感じではないな……。今は」
「分かっています。お邪魔だけはしたくありません。ですが乗船している以上、私達小笠原隊も遠慮なくお使い下さい」
葉月が大佐嬢の顔で淡々と言うと、ジェフリーはそれでも満足そうに『うむ』と微笑み頷いてくれた。
では、その事情を小笠原隊に報告するとして、葉月はテッド達を伴って、現場をまとめているウォーカーとミラーが詰めているパイロット室へと向かった。
「そうか。やはりこの区域でそうなったか……」
ウォーカーの致し方ないという顔と深い溜息。
彼がこうして納得してしまうのも、葉月同様に彼もこの区域を良く知っているベテラン元パイロットだからだ。
このトーマス艦への乗船許可をもらって後に、彼と小笠原で綿密な実行計画と準備を進めているうちに、既に二人で危惧していたことだった。『この区域では業務の邪魔になるかも知れない。最悪、ここで実務の重荷になり負担となるなら、こちらから下船希望をしよう』と、二人でその予想をした上で決めていたことだ。
だから諦めるような事になれば、それも想定内だからそれほど衝撃でもないのだろう。
そしてフライトキャプテンであるミラーも一緒に頷いていた。
「仕方がない。暫くは飛べそうもないから、事務作業にでも精を出すかな」
彼もすんなり納得してくれたようだ。
「それでも、今日までの湾岸部隊との訓練は短期間ではあったけれどかなりの成果はあったね」
「ああ、ありましたね。もし艦長の決断としてここで下船という形になっても、残念ではあるけど手応えはありましたよね」
「早速、小笠原でも取り入れたい課題も見えたしね」
「同感です。ウォーカー中佐」
ベテランで引退をした大御所パイロットのウォーカーと、今が最盛期である中堅どころのミラーがそこは感触も一致、今日まで悔いなく取り組んでこられたと満足し合っている顔があり、葉月はホッとした。
「とりあえず、数日は様子見となります。交代要員として借り出されることもあるかもしれないので、そのつもりでお願い致しますね」
葉月の周知に二人の中佐は『勿論』と、こっくり頷いてくれた。
さて──こうなったら、テッドと一緒に溜まっている雑務を一気に片づけて、本部に必要な物を送ってしまおう……という話をしながら、パイロット詰め所を離れようとしていた時だった。
「大佐嬢」
「ミラー中佐」
彼が追いかけてきたので、葉月もその声に振り返り立ち止まった。
「どうだい。久しぶりにゆっくり話したいな」
「あ、そうですね」
と言いつつも、葉月は自分に付いてきていた後輩達を見渡した。
「では私達、先に艦長室に戻っていますね、ごゆっくり──」
気を利かせてくれたテッドの笑顔にミラーがホッとした顔。
テリーとクリストファーも頷いてくれ、三人の後輩達は先に帰っていった。
「今日は天気が良い。甲板の側まで出てみないか」
「いいですね」
相変わらず日本海の天候は不順なのだが、それでも西に向かうほどに晴天の日が続くようになった。
だがその代わり、スクランブルが増えた。
そんな話を交えながらミラーと甲板に向かう。
甲板まで上がる鉄階段を上り、ミラーが一つの鉄扉を開くと、眩い光が射し込んできて、葉月は一瞬目を閉じた。
だが目を開けると、そこはなんだか懐かしいような青空を背景にしている輝く甲板。
「こうして晴れて光っている甲板を見ると懐かしいな。小笠原はこういう感じだ。真っ青な空にマリンブルーの海。そしていつも日差しに煌めいている」
ミラーもその光景を見て、穏やかに微笑みを浮かべていた。
葉月も微笑む。ミラーが同じ事を感じていてくれたこと。そして『小笠原』の事を『懐かしい』と……。もう余所から来た人という違和感がなくなり、そして本人もすっかり『小笠原隊員の感覚』を染みこませている事が嬉しかった。
そう言いたいのに。なんだか言えない。
別に恋人でもなんでもないのに。言えない。
ただ彼もそうなのか。無言のままで、ただ二人で微笑みあって甲板を眺めていた。
だけれど、ミラーから話を始めた。
「この前の話だけど……」
「はい」
そこでまたミラーが黙ってしまう。
どうしてか葉月も心臓がドキドキしてきた。
先日の仕事としての申し出の返事? まるで片思いの人に『告白』した返事をもらうような気分。
葉月の『空女房』の一歩には、彼は絶対に必要だ。ここで断られたら、かなりのダメージ……。
でも彼の返事が『NO』だったとしても『家族とやっていく』と言えば、葉月は心よりの笑顔で祝福したい。それも本心──。
「君の申し出、受け入れたいと思っている」
「──本当に!?」
その一言を聞いただけでも、張り裂けそうだった心臓がもう爆発したかと思った。
だけど、そう飛び上がるほどに嬉しく思えたのは一瞬。まだ、腑に落ちない部分が残っている。
「でもシアトルのことは……?」
「行くつもりだ。君が本部に手配してくれた休暇で、沖縄から小笠原に帰ったら、そのままシアトルに帰らせてもらう。そして『別れた妻と息子』に会って……」
何故かそこでミラーが眉間にしわを寄せ苦しそうに葉月から顔を背けてしまった。
「中佐……?」
「今まで君に大人ぶって偉そうな事を言ったけれど。俺なんて本当はたいしたことはないんだ」
「いいえ。そんなことはありません! 私、ミラー中佐に会ってから、色々なこと知りましたから……!」
「きっとそれは君が『教えてくれた』からだ」
思わぬ言葉に『なにを?』と葉月は思わずきょとんとしてしまった。
だが今度の彼は照れくさそうにプラチナブロンドの髪をかき上げる。
「──君を見て、イライラして、君に『こうすればいいじゃないか』とか『こういうところがおかしい』とか散々言っているうちに、実は自分も今まではそれに気が付いていなかったのだと……何度も振り返って驚くことが多かった」
彼と折りが合わず険悪だったことを葉月も思い出す。
だけど、そうして彼がムキになったのは……。どこか葉月に自分と重なるところがあったのだろうか? と思ってしまった。
「俺は『自分さえよければ』という男だ。その証拠に俺のことを案じてた妻の言葉が鬱陶しく聞こえ、彼女の気持ちなど考えたことがなかった」
「奥様の案ずる気持ちというのは、貴方がパイロットであることですか?」
ミラーがこっくり頷いた。
パイロットの妻はいつも案じて過ごしていくものなのだ。訓練でも任務に出ても、戦闘機に乗るだけでもう既に危険な世界に愛する夫が身を投じているのだ。
愛する子供がいればなおさら。彼が情熱を注いでいるその気持ちを理解しつつも、でも……妻として母として、ある日突然空に夫を子供の父親を奪われてしまうなんて耐えられない。それを止めたくなる気持ちを葉月は当然だと思う。
デイブの妻であるサラですら。親分の女房としてドンと構えてはいるけど、そんな心配はいつだって常で心の奥で闘っていることだろう。
そう思えば、ミラーと彼の妻の間でどのような諍いが起きたかは、想像することが出来る。
「顧みなかった。彼女の気持ちなど。何故、俺が好きで空を飛ぶことを理解してくれないのかと……。つまりそういう別れ方だったんだ。子供のことも振り返らなかった。俺がまず生きて行くには戦闘機がまず存在し、そして次に家族が存在する。戦闘機のない生活なんて冗談じゃない。俺の生き甲斐なんだ──そういう気持ちだったから彼女とは解り合えなくなった」
『生き甲斐』と強く言い切るミラーを見て、葉月は『私に似ている』と思った。
葉月もそう。彼と思い入れは違う方向性だったかもしれないけれど、『コックピットがなければ、生きていけない』と思っていたから……。
それはパイロットの誰もがそういうものなのかもしれない。誰もがなれるわけではないパイロットという特殊な技能を獲得し、精進し、そして空を飛ぶということに情熱を注ぐ場であり、そして自分が一番誇れる場所なのだ。軍人としての使命以上に、そう思う部分も大きいと思う。
葉月がそこに執着してきたように、きっとミラーもなによりも手放しがたく、そして誰よりも愛する人に理解して欲しかっただろう。だけれどそこを拒絶されたから、彼女から離れてしまった……。どうもそういうことらしい。
「でも、君に会って俺は自分独りで飛んでいたことも振り返り、一緒に飛んでいる仲間の存在も視界に入ってくるようになった」
その通りで、ミラーはすっかり『ビーストームのキャプテン』として認められ、小笠原の中では人に囲まれている姿もよく見られるようになった。
そして何よりも、彼が笑っている姿も。
初めて会った時の『精密機械』というニックネーム通りの冷たい機械のような硬い表情など、もうみせやしなかった。
飛ぶと言うことも、仲間を守るという気持ちも、そして守ってもらうという気持ちも、彼は全てに心を広げていた。
そこで一番喜びを感じているのは彼自身だろう。
今、葉月の目の前で彼は充実感を滲ませる満足の微笑みを見せくれていた。
そんな彼がさらに葉月にその微笑みを広げて言った。
「そして俺は君に『何が一番大事』かも教えてもらった」
「何が一番大事か?」
コックピットが生き甲斐で、それが一番の人間。
それは彼も葉月も一緒。だが、葉月の中ではもう『コックピット』という場所は消えようとしている。その葉月から教わった『大事な物』とは……? 葉月も考えたが、その答えがもし『自分と同じ』なら……!
そして彼が葉月が予想していたことを答えてくれる。
「大佐嬢──。君は彼との愛のために、ついにコックピットを降りることにしただろう。その姿を見て、俺も……そうしようと思った」
「!? え!! 貴方も降りてしまうの!?」
それは困る! 彼はまだ飛べるし、葉月の心を乗せて飛んで欲しいと申し込んだではないか?
だけれど、彼が妻と家族のためにコックピットを降りるという選択だって……あってもおかしくない。彼が妻とやり直すためにそうするのならば、葉月もこの前決意したように、『彼が決めた道を祝福する』べきなのだ。その決意があったじゃないか……! だけど、それはショックだ、かなりショック!!
そんな葉月の衝撃的に驚いた叫び声と顔を見て、ミラーが『君も慌てる』と可笑しそうに笑い出した。
久々にその大人っぽい余裕を見せる彼にムッとした。
だけどミラーは次には『そうじゃない』と首を振っていた。
「俺はまだ飛ぶつもりだ。君ほどコックピットに対してまだ割り切れない。だけど……」
「だけど……?」
そこで小さく微笑んだまま黙り込んでしまったミラーだけれど、暫くすると葉月をまっすぐに見つめてきた。
彼の新たなる決意が込められている眼差しだと思った。それほどに甲板から射し込んできた光に煌めいたのだ。
「彼女と息子に『愛している』と伝えたい。コックピットに乗り続けても、そこでもお前達を想って乗っていると。伝え続ける──。俺はそれをまったくしていなかったから、今度はそうしたい」
「……中佐!」
「シアトルに帰ったら彼女にそう言う。俺はただ、誰よりも彼女に分かって欲しかっただけだったのだと。『今でも愛している』と。やり直すとか、小笠原に来て欲しいとかそんなことは後回し。必ず、そう彼女に俺も伝える。君と澤村が強い絆で結ばれるまでの苦難は察してきたし、それを察して正直すごいと思った。そして君は愛している男の子供がほしいとあっさりとコックピットを手放したように。俺も今までの『プライド』は手放す。そして心にある本当の気持ちを、彼女に伝えに行く」
そんなミラーの熱い言葉を聞いているうちに、何故か葉月の方が涙を流してしまっていた。
どうしてなのだろう? 彼が熱くなると私も熱くなる。まるで今、彼の妻になったかのような錯覚すら起こすほどに感激していた。
そんな葉月の涙を知って、ミラーは逆に驚いていたのだが、葉月は彼の両手をがっしりと強く握りしめていた。
「中佐! 是非、そうしてください! きっと奥様に想いは届きます。そう愛されていると分かれば奥様だって……」
「有り難う、大佐嬢。君のおかげだ」
今度はミラーがその葉月の手を、大きなその手で力強く握り返してくれた。
「こういう仕事だ。まだ辞める気はない分、彼女と息子には俺が愛していることは伝え続けたい、万が一、何かあっても『愛されていたのだ』という気持ちだけは残しておけるようにしなくてはならない。特に息子には、俺がいなくなったとしても愛されていたことで強く生きられるようになって欲しい。そう思えるようになったんだ」
『万が一』だなんて。そんな不吉な……と、葉月は思った。
だけれど。パイロットという職業ならそれは当然の覚悟でもあった。
ミラーはそれまではその『愛を伝え、残す』ということをしなかったのだろう。
だが今度はシアトル帰省でそれをやってくると言う。
彼と硬く握り合う手と手。
新しく結ばれた絶対なる信頼関係を感じさせた。
その喜びは、お互いに見つめ合う眼差しで通じ合う。
空を飛んでいる彼と、甲板でそれを見守る私である時に感じる疎通のように……。
だけど葉月はその手がほどかれた時に、密かに眼差しを伏せた。
……もしかすると、彼はシアトルの生活に戻るかも知れない。
葉月はふとそう思ってしまった。
・・・◇・◇・◇・・・
それから暫くは訓練は休止状態。
このまま警戒区域の巡回航行も終わろうとしていた頃だった。
訓練は停止状態で、小笠原の隊員は自分たちが出来る手伝いに徹していた。
そしてジェフリーの予想通りに妙に頻繁だったスクランブルも減っていき、落ち着きを取り戻していた。
そんなある日、ミラーが直々に『流し飛行だけでもいいから空に出たい』と艦長に申し出たらしく、警戒を解き始めていたジェフリーも短時間という事で許可をしたようだ。
そして今、葉月は久しぶりの監督でジェフリーと共に管制室に詰めており、甲板から発進していく『ビーストーム』を見守っていた。
「やはり奴らは大空野郎どもだな。二、三日ならともかく余り長い間飛ばないと、コックピットと空が恋しくてしようがないみたいだな。わかるな、空に行きたくてうずうずしてしまうのが。パイロットには生き甲斐だ」
張り切って飛び出していったミラーと小笠原のパイロット達を見て、ジェフリーも笑っていた。
そしてジェフリーは葉月を見ても言った。
「葉月はもう、恋しくないのか?」
「空を飛ぶ方法はいくらでもありますでしょう? 教官のおかげでセスナの免許もありますし」
「ああ、なるほどな。今度は余暇で楽しむのか? お前の実家だと一機ぐらいドンと買ってくれそうだな」
「……かもしれません。でも、その時は教官もお誘いしましょうか?」
軽い気持ちで話していたのだが、ジェフリーは『お、いいな、それ!』と結構乗り気になってくれた。
葉月もなんだか嬉しくなり、口から出任せではあったが、本当にそうしようかと思ってしまった。
「教官も若くして訓練校の教員にはなったようですが、元はパイロットだったのですよね。だから空への魅力は誰よりも……」
「ああ、まあな……」
ジェフリーの歯切れが悪くなり、そして緩い微笑みをそっと浮かべ眼差しを伏せてしまった。
葉月もそれ以上は言えなくなる。そして少しばっかり『余計なことを言ってしまった』と思った。
これだけの力量を見せる彼はパイロットの時も若手のホープだったという噂は良く聞いていた。
だけど若いのに二十代程々であっさりとコックピットを降りて教官になったという話は有名だ。
……葉月と同じ年頃で降りたとも聞いたことがある。
その噂は様々だ。彼が事故を起こしたとも、彼の身体に障害が起きパイロットではいられなくなったとも。あらゆる噂が飛び交っていた。そして誰も真実は知らない。言えるのはパイロットだった彼が若き教官と転向しても、その実力を発揮し、大佐にまで上り詰め、沢山の教え子と部下を良き状態で世に送り出した功績は『真実』だと言うこと。
そんなことを耳にして葉月がいつも思うのは、だからこそ彼は自分が空に行くように、空に行こうとする教え子に部下に対して真摯に真っ正面に取り組み、送り出してくれるのだろうか……と。
ミラーもそして葉月も、空へと向かっていくのは大事に育てた教え子に部下。だけどそれは彼自身でもあったのかもしれないと。
「彼等、はしゃぎすぎだな。飛ばしている──ちょっと注意しておこうか」
葉月とジェフリーの前でフライトの監視をしているウォーカー中佐がヘッドホンを片手に『はしゃぎすぎだ。空域境界が目の前だから、もっと母艦寄りに戻ってこい』と指示していた。
「なんだ、なんだ。ブライアンまで。中佐。キャプテンがそんなものでは困る。直ぐに着艦させるぞと言ってやってくれ!」
「イエッサー」
ウォーカーも笑っていたが、ジェフリーも電光板を見て可笑しそうに笑う。
あの一匹狼だった部下が、今では若いパイロットと一緒に悪ふざけをしているのが、逆に嬉しそうだった。
「艦長、ちょっとよろしいですか」
「どうした、ラルフ」
後ろの航海地図を広げているデスクの側で、ラルフが一枚の電信書を手にし、それをジェフリーに見せていた。
暫く二人でひそひそと話していたのだが──。
「葉月、悪いが直ぐに戻るのでここを頼む」
「はい」
「艦長室にいる。今、彼等は出ていったばかりだから後五分か十分飛ばしたら、着艦させてくれ。俺もその頃には戻ってくるからな」
「……は、はい」
なんだか妙に硬い表情だった。
何かあったのだろうか?
それを物語るように『五分、十分で戻せ』と言い置いていった。まだフライトは飛んでいったばかりだ。ミラー達の残念そうな声が聞こえてきそうだが、でも、ここの最高司令官である艦長の命令は絶対だ。
案の定、ジェフリーの指示をウォーカー中佐が伝えると、パイロット達が皆不満そうだとの事だった。だが葉月はそれでも『艦長命令』と強く言い、ジェフリーの指示に従うように彼等を納得させる。
その指示された時間がやってきた。
「中佐、着艦させてちょうだい」
「了解、大佐嬢」
こういった指示は小笠原でやっていることと変わりない。
だけど葉月はなんだか落ち着かない。
こうしてこの管制室にジェフリー無しで指示するのは初めてではないし、こうしてジェフリーがほんのちょっとの離席をすることは今までもあった。
その間、葉月はこうして湾岸部隊も小笠原部隊のパイロットに離席の間の指示を出したことだってある。
なのに──今日は、妙な感じがする。
この前ジェフリーが『俺がいない時はお前が最高司令官』なんて言ったせいだろうか?
(はやく、着艦して)
皆が空母艦に向かって帰ってくる時間が、今日は長く感じる……。
しかし葉月のその勘は当たってしまう。
「国籍不明機、確認──!」
「!?」
突然の管制員の声に、葉月はドキリと固まった。
そして目の前にいるウォーカーも青ざめた顔で、葉月に振り返る。
「もう一機確認──。侵入、確認!」
「こちらも侵入、確認!」
声は落ち着いているが慌ただしく報告する管制員の声、そして周りの管制員全員が目の前の機材で確認する手先も慌ただしくなった。
「ビーストームとの距離……」
淡々としている管制員のその『距離の報告』に葉月は青ざめた!
下手すれば追いつかれる距離だ。
「スクランブルの発令を──!」
「お、お嬢……!」
……自然に出ていた言葉だった。
だけど自分で言っておいてハッとした。
初めて言った言葉だったし、それに目の前のウォーカー中佐が戸惑いの顔を見せているように、周りの管制員全員も戸惑った顔をしていた。
お前が言う言葉じゃない。
それは艦長が出す指示だ。
小娘の大佐がそこまでするものじゃない──。
葉月にはそう見えたし、聞こえたし、自分でも『そうだった』と思った。
「管制長──! まったく後退しません! 直に後尾にいるビーストーム1と接触します!」
ビーストーム1──! 葉月は電光板を見上げた。
そこには後輩達を先に着艦させるために後尾についているミラーの機体、そして国籍不明機とやらがぐんぐんと近づいてきていた。
「何をしているの! 早く湾岸部隊を──! スクランブルに!」
葉月のその声が管制室に響き渡った。
まだ戸惑っている者が多い中──。
「ラジャー、大佐嬢! お前達、スクランブルだ、いいな!」
『ラジャー、管制長!』
管制長と言われている彼が、葉月の命令を受けてくれた!
そしていつものように管制員達の手早いスクランブル指令が艦内に発令される。
また艦内に響き渡る警報音。
甲板の整備員達が慌ただしく動き出す。
「艦長を呼んできます」
この警報音を聞けば、ジェフリーもすっ飛んでくるとは思うが、それでもお嬢ちゃん大佐をこの状況から助けるのだとばかりにウォーカーが管制室を飛び出していった。
だが、スクランブルがかかったばかり、甲板には戦闘機が準備されパイロットが乗り込んだところだ。
「駄目だ──。間に合わない! どうしてだ、いつもと違うぞ」
管制長の切迫した声に、葉月も電光板を見上げると、もうミラーと二機の不明機が接触寸前だ。
葉月はウォーカーが放っていった通信ヘッドホンを手に取り、頭につけた。
「ビーストーム1──! もう分かっていると思うけど」
『分かっている。もう、見えた』
「見えたですって……!?」
間に合わなかった──。
ジェフリーと話したように、湾岸部隊の使命であるところだが、でも──これでミラーに何もせずに帰ってこいというのは難しくなってきた。
『大佐嬢、安心してくれ。なんとかやりすごして、湾岸部隊がつくまでに何もしないで着艦するようにしてみる』
そんなの無茶だ!
葉月がそう思った時、管制長がついに『ビーストーム1、接触』と報告してくる!
(はやく、はやく──湾岸部隊行ってちょうだい!)
「湾岸フライト、全機発進完了」
空母の何本かのカタパルトで一斉に、訓練さている素早さで湾岸フライトが飛び立っていった。
葉月がこれでなんとかなると僅かに安心し心が緩んだ時だった。
『くっそ! 嘘だろ!! 撃ってきたぞ……!?』
「なんですって……!!」
ミラーのその報告に、葉月どころかそこにいる管制員全員が顔色を変えた。
しかしその驚きだけでは済まなかった。
『他の機体も攻撃されている!』
「わ、分かったわ……! 今、湾岸部隊が向かっているから……」
ただひたすらそれを待とうとした。
だが、ミラーが苦しそうな声で言った。
『このままではやられる……!』
その声の詰まり方で、パイロットだった葉月には分かる!
激しい上昇下降、旋回を繰り返しながら攻撃を交わしている激戦真っ最中なのだと……!
反撃しない限り、彼が自分を守る術は操縦桿を巧みに操るしか術がないのだから……!
「大佐嬢、どうしますか。このままでは……!」
管制長の危機迫った声。
そこには『湾岸部隊は間に合わない、反撃命令を──』と含ませているのが分かる。
だけど、それは一管制員である彼が、言うべき言葉ではないのだ。
「大佐嬢……」
「大佐──!」
管制員の誰もが葉月を見ていた。
ここでその決断を下せるのは、その言葉を言っても許されるのは『葉月だけなのだ』という皆の目。
もし、ここで葉月が反撃命令を下したとしたら?
もし、それでミラーが見事に反撃し、不明国機を撃墜したら?
場合によっては政治に関わる大きなことになりかねない。
明日の新聞のトップはこの記事になるほどの騒ぎになるかも知れない!
そういう判断と責任が葉月の両肩にのしかかる!
だからとて──!
もし、ここで葉月が反撃命令を下さなかったら?
もし、ミラー中佐がこのまま葉月の思い切った決断を待ったまま尽きてしまったら……?
『彼女と息子に愛していると伝えたい』
ミラーの声が聞こえる……。
大佐嬢に決断の時がやってくる!