【お題 SIDE】 *** 『好き』の理由(大佐室ver.) ***

TOP | 『好き』の理由

【お題 SIDE】揺らめく恋と10の言葉たち
 
『好き』の理由(大佐室ver.)

「あのう、これを連隊長秘書室に持っていって欲しいのですけれど。お願いできますか? ラングラー少佐……」

 妙に丁寧な言葉遣い。
 そして遠慮がちに、こちらを伺う下手な態度。
 以前、『澤村中佐』が使っていた側近席で事務仕事をこなしていたテッドは、ちょっと唖然として彼女を見た。

「あの大佐? どうして俺にそんな遠慮しているんですか。俺、なにか……しましたか?」

 いつも様々なことで振り回してくれる彼女が、なにか新しいことを思いついて、テッドを試しているのかとさえ思えた。
 だが、彼女は『違う』と首を振る。
 そして、持っていって欲しいという書類を差し出して、テッドをじいっと見ている。
 そんな時、彼女の顔が凛々しい上官ではなく、同世代の男として『愛らしいな』と感じることが出来る女性の顔になる。こうなった場合、上官部下でもなく、先輩後輩でもなく、さらに同僚でもなく、『友人』としての顔なのだとテッドは感じることができ、益々、『俺が何か?』と首を傾げた。

 すると彼女が呆れたように、いつものふてぶてしさで、テッドの手元にぽいっと書類を放った。
 その方が『彼女らしい』のだが、今度のテッドは、何故あんな下手な態度をしたのか、訳の分からない大佐嬢の『お遊び』にイラッとした。

 いや、『イラッ』としたのは、今始まった事じゃない。
 テッドは昨夜から苛々している。
 だから余計に……。いつもは、側近の俺だからこそスルーできる大佐嬢の態度にも、今日はイラッとしてしまったのだ。

 すると、その大佐嬢にズバリと言われた。

「今朝、貴方の顔を見て一発で分かったわ。昨夜、小夜さんと喧嘩した──。でしょ?」

 テッドはどっきり!
 いつもは絶対に『小夜』のことは顔に出さず、この大佐嬢にからかわれたり、面白半分にカマをかけられても、さらっとかわしてやるのに!
 ……まあ、それだけ。テッドも大打撃だったと言うことか。
 降参するようにがっくりと無言でうなだれただけで、大佐嬢にも通じてしまったようだ。
 こんなつもりなかったのに。どうしてばれたのか? 確かに苛ついていたが、なるべく気付かれないようにしていたつもりなのに。

「皆、気がついているわよ。貴方が苛ついていること」

 テッドはさらにどっきり。今度はかなりどっきり!
 まるで心の声に合わせて会話を進めていく大佐嬢の勘の良さに、もうぐうの音も出ない状態。

「俺、仕事には持ち出さないつもりですが」
「持ち出さないと言う『強い気持ち』が、ありありなの。苛ついていると言うより、『怖い顔』しすぎなのよ。若い子達が怯えていたわよ」

 はあ、なるほど、そうなるのか。確かに、そうかも。と、テッドは額を抱えた。
 でも、だ。

「それでもプライベートのことですから、ご心配なく。大佐には迷惑はかけませんから」
「逆に、迷惑をかけているのは『この私』だったりして? もっと言えば、うちの旦那さんも〜。なんて、心配がねえ……ちょっと昨夜からしていたものだから」

 ──読まれているよ。と、テッドは益々うなだれる。
 いつもは、どこかお嬢様のままで手が焼ける大佐嬢なのだが、いざという時や、押さえるべきポイントはばっちりと握ってくるので本当に敵わない。
 そんな彼女が、いつも恋愛ごとには、ちょっと頼りなく見えるのに、ハッとさせられることを言った。

「好きすぎると、かえってね……。やりすぎるものなのよ」

 その一言が、テッドの胸を貫いた。
 昨夜の恋人との喧嘩は、まさにそれだったからだとテッドは分かっていた。

 早く会いたかった。
 彼女の顔がやっと見られて幸せだった。
 そして、彼女は可愛らしかったし、綺麗だったし、どんな顔をしても愛おしかった。
 離れている間に出来なかったことを思って、めいっぱい愛したと誓っても良い。
 なのに──。ふっと安心したそのひとときを彼女と感じ合っていたのに、徐々に彼女がテッドの胸の中で不安そうな顔に変わる。

 そして、テッドが一番言って欲しくないことを言った。

『まだ、葉月さんのことを忘れていないのよ。御園大佐嬢がなんでも一番先に来ちゃうのよ』

 数年前なら、その通りだと言い切っていたこと。
 そして、今でも多少はそれがあることは否定できないこと。ただし、上司として、だ。
 テッドという男個人ではと言えば、絶対にそんなことはないと断言できる。
 どうして『お前が一番だよ』と言わなくちゃ、分かってくれない? 俺は言わなくてもお前に分かって欲しいよ! と、心の中ではそう叫び……。でも、彼女には『もう関係ない。仕事で一番大事な人』と言えば、彼女はもっと逆上する。
 その時の、彼女の荒れ狂う顔が見ていられない。醜いとかでなくて、可哀想すぎて痛々しくて見ていられない。そんな時、テッドは思う。──『やっぱり、俺では駄目なのではないか? 元よりお前が望んでいた男じゃないもんな。側にいただけの、ちょっと気が合っただけの』と、思う。
 そう思う苛立ちから、思わず口に出ていたのが『お前はまだ澤村が一番なんだ』だった。
 その後、彼女は、くつろいでいた恋人の胸から飛び起き、テッドが優しく脱がした制服を慌ただしく身につけ部屋を出ていった。
 あっと言う間の出来事でテッドは途方に暮れたが、その後に襲ってきた自己嫌悪の大津波。
 そして、今朝に至る……。

 二人の思いの狭間に、肌の狭間に、いつも存在するお互いが恋い焦がれていた過去の人。
 大佐嬢と、眼鏡のやり手中佐の夫妻。
 二人が揃って尊敬している大好きな先輩で、今はこの夫妻なしでは有り得ない二人の日々。
 仕事の生き甲斐も、仲間としての素晴らしい手応えも、全部、この夫妻がいなくちゃ有り得ないのに……。その『二人のせい』にして、お互いの激しく想い合う本心を上手く繋げることが出来ない二人。いいや、二人じゃない……。彼女を不安にさせてしまう、気持ちを上手く伝える事が出来ない『俺』。

 好きだからこそ、上手くできないこともあって。
 好きだからこそ、行き過ぎてしまう行為を思わずしている……。

 それを、葉月にはきっちりと見抜かれていた。
 と、言うことは……。きっと今頃、あっちの『工学科科長室』では、こちら以上にあの眼鏡の中佐が恋人の元気のない様子を悟って、大佐嬢同様に喧嘩をしたと察していることだろう?

「……そういう顔をしているから気をつけた方が良いわよと言いたかっただけ。その書類、水沢少佐に届けてくる? 今じゃなくて後で良いから」

 恐る恐ると言った言葉で『ふざけて』話しかけてきたのは、つまりは『若い子達がそんな風に怯えているわよ』という大佐嬢なりの釘差しだったらしい……。

 テッドは『気をつけます』と溜息をついて、受け取った書類を机の横に置いた。
 そしてまた激しく反省しながらの事務作業。もうすぐ大佐嬢がクリストファーと訓練に出ようかという頃なのに、ちっとも進みやしない。
 そんな頃。大佐室のドアが開いて、誰かが入ってきた。

「よう、邪魔するぞ」

 颯爽と入ってきたのは、黒いスーツの男性『谷村社長』だった。
 彼は今、工学科と繋がった仕事も手がけるようになり、ここのところ、こうして軍隊を訪ねてくるようになった。
 隼人達が目をつけた航空機会社が、なんとこの男性の会社だったことが判明し、共同経営している友人と連絡しあいながらも、この社長自らが基地へと営業に来ている……という近頃だった。

 だが、その社長が来ると、あの氷の大佐嬢の笑顔が、ぱあっと可愛らしく花咲くのだ。
 それを何度目にしても、テッドは目を見張ってしまう……。だけれど、彼女を後輩の立場で見守ってきたテッドとしては、ほっとできる瞬間でもあった。
 そしてずっと前に彼女自身から聞かされていた『大好きだった義兄』が、テッドの目の前についに現れた時の衝撃。──『これは、澤村中佐も大変だっただろうなあ』だった。つまりはテッドなんか元より足下には及ばなかったと突きつけられてしまう程の男性だと一目で分かったのだ。
 それが証拠に、葉月はこの義兄が訪ねてくると、まあ毎度の如くこの通り。すっかり『可愛い妹の顔』になる。

「兄様、いらっしゃい。待っていたのよ」

 それでも自分の職場、大佐室故に、最初はこうしてやや抑え気味の葉月。
 でもテッドの目から見ても、その可愛らしく染めた頬なんか、もう嬉しいという気持ちであるのが一目瞭然。
 テッドもここは席を立って挨拶をする。

「いらっしゃいませ。谷村社長」
「ご苦労様、ラングラー少佐。お忙しいところを押しかけてしまい、すみませんね」
「とんでもありません。どうぞ、そちらにおかけ下さい。大佐も一緒に……」
「有難う、テッド」

 お茶を入れるから、二人でくつろいでは……と、テッドがソファーへと勧めると、葉月はあの可愛らしい義妹の顔ですんなりそうしてしまう。
 本当は、こんな時でもちょっとは大佐嬢の顔を残しておいて欲しいテッドは、いつも微かに苦笑いを浮かべている。
 だけれど、そんな顔を見ることが出来るのは、この専属側近になったテッドに気を許してくれているから……彼女は家族の前でしか見せない顔を、テッドがいても構わずに見せてくれているのだと分かっていた。

 キッチンへ行って、社長が好きなエスプレッソの準備をする。
 その間、義兄妹の二人はソファーに向き合って、和やかな会話を始めていた。

「隼人に会いに行ったのだが、留守だった。相変わらずだな。落ち着いてそこにはいないのだから」
「そうだったの……。でも、兄様が来ることを楽しみにしていたわよ」
「俺も、隼人に相談したいことがあったのだがね……」
「え? なあに? 私には話してくれないの!?」
「チビじゃ駄目だ。隼人じゃないと頼りにならないことだ」
「なあにー? それっ! 兄様と隼人さんは、いっつも私だけ子供扱いにして、のけものにするの!」
「本当の事じゃないか、チビ」
「チビって言わないで!! 私もう、二児のママなんだからねっ」

 あの葉月がチビと言われて、むくれている顔。
 本当は大佐嬢の顔でいて欲しいのだが、そんな子供のような顔をする彼女を目にする度に、テッドは笑いを堪えている。

(本当に……。家族であって、大好きな男性なんだな)

 二人の関係、もしくはその間にいる隼人も含めたこの三人の関係は『俺達には不思議すぎる』と、小夜と話すことがある。
 彼女がその昔、この義兄妹の関係についてかなり非難していたことは知っているが、テッドはそれについては今は触れない。何故なら、あの時『俺もお前も、あの人達のことは見える部分でしか感じることが出来なかった』から、見える部分だけなら、小夜があのような気持ちを持っても当然だったと思うし、間違っていないとテッドは思っているからだ。
 それを分かっている上で、テッドと小夜は『あれも有りなのかもね』と、今は見守っているだけ。

 それになんと言っても……。今となっては、この基地内で、黒スーツの若社長兄さんと御園中佐が仲むつまじく並んで歩いている姿の方が、大佐嬢との義兄妹ぶりよりも『御園一族の婿二人』と言われて有名なものとなっている。
 それでも、こちらの義兄妹はすっかり息が合っているかのように、お互い微笑み合って良い雰囲気だった。
 すこしばっかりテッドは居心地が悪くなる。悪い意味ではなくて、ちょっとお邪魔かなと。それだけ濃密な二人だけの雰囲気を感じるのだ。

(そうだ。あの書類を秘書室に持っていこう)

 良い口実を見つけたと思った。
 テッドはお茶をさっさと二人の前に置いて、『お二人でごゆっくり。暫く離席します』と葉月に告げた。
 すると何故か、葉月がそんなテッドを見て、『にんまり』と笑ったのだ。

「あの書類、秘書室に持っていってくれるの?」
「はい。持っていかねばいけませんでしょう?」

 すると、葉月はさらににんまりにまにまと、いつもの『悪戯大佐嬢』の笑みを突きつけてくる。

「だったら、『ついで』に工学科に行って、うちの旦那さんを呼んできてくれる? 兄様とお茶をしましょうと誘ってきてよ」
「え?」
「あ、その書類、もう急いでね。早く行ってきて! そうじゃないと、水沢少佐どころか、リッキーに怒られちゃう!」 

 葉月に『早く、早く!』と急かされて、テッドは『ホプキンス中佐に怒られる』の一声で、思わず大佐室を飛び出す。
 そして自動ドアが閉まるその時、テッドの背に『うちの旦那さんも忘れずに呼んできてね。兄様が待っているから!』と届いた。そんな急かす大佐嬢の声にも条件反射のように廊下に飛び出し、テッドは無意識に六中隊へと向かう道を歩き始めて、ハッとした。

「自分で呼べよ! 内線があるだろう!?」

 廊下に出てそう叫んだ。
 そう叫んで、さらに気がついた。

 やられた! 小夜のところに『行ってこい』と言う意味だったのだと。
 こういう事なら、あの大佐嬢に『俺はその手には乗りません』と突き返して、秘書室だけ行って帰ればいい。テッドは『仕事中の脳』で、そう判断していた。
 でも……どうしてか。その業務判断をした後に、彼女の悲しい声とか痛々しい険しい顔とか、最後に部屋を飛び出していった時の大粒の涙とか。それが何度もちらついた。
 そして、その足が『テッドという恋人』として、六中隊へと向かい始めていた。

 

・・・*・*・*・・・ ・・・*・*・*・・・・

 

 六中隊に向かう途中、テッドはいつも小夜に聞かれる一言を思い返していた。
 ──『テッドはどうして私が好きなの?』 
 そんなこと、一言では言い表せないから、『どう言って良いか分からない』と言うと、また彼女の機嫌が悪くなる。
 つまり、やっぱり……俺が不安がらせているのかと思った。

「本当に、一言では言えないんだ」

 テッドは溜息をつきながら、廊下を歩く。
 五中隊本部を過ぎて、もうすぐ六中隊本部、教育隊はその向こうで、さらに工学科はもっと向こう本当に端っこにある。しかも連隊長室とは真反対になるのに、葉月に言いつけられ……いや、テッドは自分の意志で、恋人が勤める部署に向かっている。

 その間も、昨夜の恋人のことを一生懸命に思い返す。
 やっと会えたからとて、あんまりがっついちゃいけないと思って、抑えに抑えて『やんわりソフトに』彼女の肌に触れようと努めた。吐き出す息が震えていることを悟られないようにそっと、柔らかい肌を包んでいる白いカッターシャツをテッドの手で脱がせて……。その時の小夜の表情は、普段の落ち着かない騒がしさもどこへやら。しっとりと、とても綺麗なんだ。と、テッドは思っている。
 彼女は自分のことを『美人じゃない』と言うけれど、テッドとしては『どこが?』と思う。そりゃ、凄い美人ではないけれど、テッドから見たら、とても魅惑的な東洋人の顔つきで、黒い髪も瞳もお気に入りだ。さらに日本人らしいしっとりとした丁寧な仕草もハッとするし、日本に来てから『うわ、これいいなあ』と思った日本人形や、京都の愛らしい舞妓さんのように思える可愛らしさが彼女の特徴だと思う。
 国に帰ったら、あっちの友人に得意げに自慢したいぐらいだ。そうだ、その時は着物を着て欲しいなあとか常に思っている。何故なら、一度だけ彼女が小笠原御園家であったホームパーティで『浴衣』を着てきた時、凄く似合っていたからだ。テッドなんかすっごいドキドキしたぐらい。しかも、周りの同僚や先輩達にもすごく好評で、小夜も嬉しそうだったし、恋人のテッドもとっても誇らしかったのに。
 昨夜だってそうだ。久々に肌を見せてくれた小夜は、彼女らしい可愛い花柄のランジェリーを身につけていた。可愛いだけじゃなくて、透けそうで透けない優しい風合いの生地がとても色っぽく彼女をエレガントにも見せていた。こんな可愛い姿を用意して待っていてくれたんだという感激──。だからもう、それだけでテッドは愛おしくて堪らなくなって、あんなに彼女に抱きついて夢中になって……。

 なのに。どうして、最後の最後に、あんなに不安にさせてしまったのだろう……。
 あのままの彼女で充分なのに。
 昨夜のランジェリーだって可愛かったが、本当は平日に泊まっていく小夜が見せる無地のデイリーなランジェリー姿の方が、実はほっとしたりする。
 そういう彼女が好きなのになあと、テッドは強く思う。

『テッドはどうして私が好きなの?』

 一言では言えないよ。
 いっぱいあるから言えないよ。
 それが上手く伝えられないだけだよ。
 ただ、今思うのは、こんな俺を好きだと元気いっぱいに言ってくれているお前が傍にいてくれることも『好きな理由』の『ひとつ』だよ。
 いっぱいあるんだ。

 そうだ。そのひとつ、ひとつを、丁寧に伝えてあげれば良いんだ。
 お前は可愛いよ。俺の中で一番傍にいて欲しい人だよとか言って、安心させてあげるんだ。

 テッドはそう思った。

 この後、言いつけ通りに大佐嬢の旦那に伝言をしたのだが、ここでも見事に『後輩への計らい』をしてくれた隼人。
 『お茶を一杯飲むまで帰るな』という隼人の顔が『良く来た!』とばかりにテッドの肩を叩きまくっていたが、その中には『俺の奥さん、良くやった』と通じ合っているようにテッドには見えてしまった。

「昨夜はごめんなさい」

 昨夜、やっと会えた彼女が見せてくれたしおらしい可愛らしい顔が、そこにあった。
 俺から謝りたかったのに、こういう潔さはいつだって小夜が一枚上手。そんな潔さ。それもテッドが彼女を好きな理由のひとつ。
 なのに俺ときたら……。

「今夜もまた来いよ。俺、お前のへたくそなオムレツが食べたいから」

 先ほどの反省も何処へやら。こんなことしか言えない。
 それでも『へたくそでも好き』という意味は込めたつもりだ。

 気がつけば、彼女が泣きそうな顔でテッドの胸に飛び込んできた。
 いつもそう。こんな時、実は彼女に何回も助けてもらってきたのはこの俺だったのだと。
 テッドはそのまま、優しく小夜を抱きしめた。

「昨夜のあれ、可愛かったからもう一度みたいなあ……」

 小夜のきょとんとした顔に、思い切って『あのらんじぇりぃーが〜』と小声で囁くと、彼女はけろっとした顔で言った。

「なによ。テッドがくしゃくしゃにしちゃったから、洗濯しちゃったわよ」

 『またね』と、あっさりと切り捨てられた。
 俺、そんなにくしゃくしゃにしたかなあと、思い返してみる。
 そんな顔を、彼女はあの愛らしい黒い瞳で、幸せそうに見つめてくれていた。

 もうひとつ、忘れちゃいけないこと。
 離れた部署で働いているのに、こんな疎通を見せてくれる御園夫妻。
 俺達、貴女と貴方をとっても尊敬しているし、いつも感謝しています。

 

 

TOP | 『好き』の理由
Copyright (c) 2000-2007 Yuuki Moriya (kiriki) All rights reserved.