43.作戦続行

通信隊の男達は……このセッティングしたこの場所も……

もう敵には知られたとあって……また機材のシステムをばらして移動の準備を始めた。

「私が目くらましに行くわ……フォスター隊長には……

一番大事な『復旧』作業の護衛は絶対にやり遂げて欲しいから……」

葉月が元々……授かってきた『作戦』

父が今……『許可』は出してくれたが……『持ち込んできた張本人』は変わりないから……

敵に見つかりやすい『ダミー役』は自ら『志願』した。

勿論──他の海兵員達は、相も変わらず『お転婆』な葉月の申し出に驚いていた。

「しかし……危険な役目ですよ? ミゾノ中佐」

男らしいフォスターが、自分が行こうしているのが葉月にも解ったが……。

「一番大事なのは……ダミーでなく今度こそ『復旧』をしなくてはいけないチームの方よ」

葉月の無表情で冷たい眼差しが、また『復活』

葉月のその強い眼差し……。

先ほどの『単独潜入』

達也と隼人を使い分けて、フォスターにさり気なく『援護』を指示したあの手際……。

そして……敵を惹きつける『欺き方』

それをマザマザと目の前でこの屈強の男達は見せつけられたのだ。

葉月がそういうと……何故か従わざる得ない『説得力』があったのだ。

フォスターがうつむいて……葉月の向かい側でため息をついた。

葉月も……思うところがあって……思い切って呟いてみる。

「女の私には……任せられないと?」

葉月が生意気にそう呟くと、同じ中佐でもキャリアでは先輩。

海兵隊員としては『専門』のフォスターに投げつけたと合って皆がやっぱり息を止めた。

しかし……フォスターは首を振った。

「男のプライドを傷つける……と、あなたは思ってそう言うのですか?」

「別に? ただ……ここまでシステムを実行まで持ち込んだのは……

フォスター隊の功績よ……それを私が邪魔しに来たのではないかと思われてはやりにくいので」

その……切り返しも『生意気小娘』なので……

フォスターが怒り出さないかと、周りの海兵隊員達は冷や冷やと眺めていた。

達也だけが、呆れたため息を腕組みながら落として……

通信機を移動しようと片づけている隼人と小池……そしてトッドは

『お嬢らしい』ともう既に『クスリ』と笑いをこぼしていたのだ。

フォスターの顔色を皆は見守っていたのだが……

急に彼はおどけて……両手の平を天井に向けたのだ。

「男のプライドなんて既に『ぼろぼろ』ですよ?

あんなに貴女にやりのけられ、助けられたとあっては……いい笑い者だ」

そのおどけ方を見て……葉月はせっかく助けに来たのに

彼等を『笑い者』に突き落とした『女』と言われたようでムッといつもの顔になったのだが……

「──ですが……あなたが……あなたのあの様な『お手並み』は……

私の部下も唸った事でしょう……

むしろ……本当にあなたは『中佐』としてのし上がった若いお嬢様で……

それで……あの『ミゾノ中将』の娘で……頭の回転は『ミセス=ドクター』譲り……

誰だってここにいた者は痛感したでしょうから……

『笑う奴』には『笑わせればいい』って所かな?」

フォスターが葉月に初めて……中年の男らしい割り切った素の笑顔を見せてくれたのだ。

「そうだろ? 皆?」

フォスターが部下に同意を求めると……

「俺が彼女の護衛に付く」

なんと……黒人の『サム』が銃を肩に掛けて一歩前に出てきた。

「正直……さっきの戦闘は見ているだけで鳥肌が立った。

今度は……『お嬢さん』の役に立ちたいところだな。男返上だ」

「どうかな? 御園嬢……それで宜しいなら『ダミー班』を任せて……

私は本来の使命、お言葉に甘えて復旧班に専念させていただきますよ?

ただ……男としてあなたに一応……危険な役目から引き留めただけです」

「──あ……有り難う……」

フォスターの男らしい気持ちがやっと解って葉月は頬を染めて頷いた。

「あと……一人必要だろう?」

フォスターがそう言いながら……『達也』に目線を送った。

達也も隊長の視線を受け止めて……腕を組んだまま、また……面倒くさそうなため息。

「だろうな……俺がじゃじゃ馬のことは良く知っているからな。オーライ……」

達也がすんなり承諾……。

葉月としても良く知り抜いている達也が一緒とあれば心強いところだ。

「では──ミゾノ中佐? 通信側は誰を? やはり……」

フォスターの目線は、小池と配線を片づけている隼人に向けられたのだ。

通信隊の男達も……誰が『ダミー班』で、それらしく『起動作業』を敵に

気づかれるよう『派手』に実行する役をやるかと……手元を止めた。

「いいえ……少佐は『空軍管理官』として最後に空の指揮をしてもらう

重点的な役目があるから……ダミーには一緒に連れていけないわ」

そこは──『恋人同士』の甘えを少しも見せない葉月で……

周りの男達は、急にそんな女中佐に無口になる……。

「そうね──許されるなら……私の中隊で通信科隊長を任せている『小池中佐』を……

クロフォード中佐には『復旧』はやり遂げてもらわないといけないから……」

すると──小池が配線から手を離して……葉月のそばに寄ってきた。

「だろうね……トッド先輩と同じぐらいの力量がある俺が操作しないと『ダミー』の意味がない。

それに……『じゃじゃ馬』のやり出す事……。

ここは、長年供にして……同じ中隊同志の俺が行くのが一番だろう

それに海野とも面識がある。丁度良い」

『ダミー班』は葉月を含めて『4人』志願が固まった。

隼人も……側近故、『じゃじゃ馬のお供』をしたいところだが……

葉月が言うとおり……最後の管制指示は隼人が言い付けられた一番の役目だ。

だから──悔しいが……葉月とは『別行動』になる覚悟をした。

そしてトッドが一言……。

「念のためだ……もう一人……コイケのアシストが必要だな?」

「じゃぁ……僕が……小池先輩とはずっと一緒にやってきたし……

同じ日本人同士……一緒に行きます」

富永が前に出た……。

「決まりだな」

フォスターがそれで『ダミー班』は身軽に動けるように少人数で固めようとそこで打ち切った。

葉月も、フォスターの『少人数行動』に賛成したので反論はせずに従う。

そこで──葉月は父と先ほどまとめた

『二陣突入のタイミング』と『ダミー起動場所の爆破決行時』をメンバーに説明。

皆が頷き合って『了解』をする──。

「発電施設はそこの……『宿舎』の横だ……」

フォスターが夜が明けた空が見える向かい側の建物を指さした。

葉月もその『場所』を窓際から『確認』

無事に下に降りて外に出れば……走ってすぐの場所。

建物の高さは向こうは3階の建物で……

葉月が見渡している窓辺からは屋上が見える建物だった。

その向こう側、宿舎の隅に小さな建物が……それが、どうやら『発電施設』らしい──。

そこに辿り着くように……葉月達が『目くらまし』で敵を惹きつけなくてはならない。

「解ったわ……後少し……復旧さえすれば空からの守りも強化できるし

救援隊も、救急隊も空で待機できるから……

犯人がどう始末付けられるかは定かでないけれど……

『人質』の事は二陣に任せて……復旧は今度こそ……私達の手で……」

『後少し……』

そう──発電施設に上手くたどり着いて、復旧さえしてしまえば『成功』だ。

皆の時計は……『6時』を指そうとしていた……。

「ロスタイムを取り戻そう……」

トッドが呟くと、皆が『仕切り直し』とばかりに元の表情を宿す。

使える交信機をまずフォスターとトッドが責任者として付ける。

残った交信機は2つ……。

ダミー班は、葉月と小池が付けることとなった。

お互いの交信具合をチェック、二陣の隊長とのチャンネルも合わせていると……

『トミー? トミー? どうした? 何かあったのか??

捕らえた敵はまだ……パスワードを吐かず手間取っているのか??』

葉月が蹴り飛ばした金髪男の『トランシーバー』からそんな声が聞こえてきた。

「犯人の『ボス』よ……ここを離れないと!」

葉月の言葉に、皆が頷き合う!

『行動開始!』

フォスター達は、先ほど行き損ねた道へと向かう……。

葉月達は……一階下にある『電話交換室』にもOA機材はあるだろうと踏んで……

フォスター達とは反対の道取りを取ることにする……。

「葉月……待って!」

皆が散ろうとする中……達也と並んで動き始めた葉月を隼人が呼び止めた。

「なに!? 早く行かないと……置いてかれるから!」

隼人がそれでも……葉月に向かってきながら胸ポケットから何かを取りだした。

『白い巾着』だった……。

それを有無を言わさず……葉月の手に握らせる。

「オヤジがお守りとか言って……俺に持ってきてくれたんだ……

『おふくろのへその緒』」

葉月は驚いて……それを隼人に突き返そうとしたが……

葉月の手を握りしめる隼人の力は強くほどくことが出来なかった。

「信じてはいないけど……きっと……俺の所におふくろは……

勇敢なじゃじゃ馬を連れてきたんじゃないかって……さっき思って……

おふくろが連れてきたじゃじゃ馬だから……今度はきっとお前を守ってくれるよ」

隼人は口早にそう言うと……サッと葉月から離れて……

「サワムラ君、早く!」

呼んでいるクロフォードの元にあっけなく走っていってしまった……。

『あ……』

葉月は……隼人の父『和之』が息子の安全を亡くなった母親に託したのに……

それを簡単に渡されたので戸惑ってしまった。

でも──

『隼人さん……本当はお母様のこと……』

口ではそうは言うけど……やっぱり『いるように思いたい』

記憶がない母親の幻を……

葉月と一緒……姉の幻を作り出すように……隼人も作り出していたのだと……。

『隼人さんと沙也加お母様が繋がっていた、へその緒……』

葉月はそれを握りしめてそっと見つめた。

「マザコンだな、あの歳で『おふくろのへその緒』かよ?」

側で見ていた達也が嫌みたらしく吐き捨てた。

葉月は達也を下から睨み付けたのだが……

「彼のお母様は……彼が2歳の時にもう亡くなっているのよ」

そう冷たく言い放って……そっと大事に胸ポケットにしまい込んだ。

達也はそれを葉月から聞いて……驚いて息を止めたのだ。

そして──

「訂正……今、言ったこと取り消してくれ……本人の前で言わなくて良かった……」

達也も哀しそうに瞳を伏せて、そっと葉月の肩を叩いた。

口は悪いが、本当に自分が間違っていたときは素直に『認める男』だから葉月も怒らなかったのだ。

そして……

達也も……父親に育てられて育った『片親育ち』の男だったから……。

隼人の立場は、葉月より解るだろう……。

『姉様とお母様が付いていれば……百人力♪』

自分の背中に急に……力強い女が二人引っ付いてきているような気になって……

葉月はニコリと微笑みながら……

「行くぞ! 葉月!」

「お嬢! 早く!!」

達也と小池にせかされて、葉月も『戦闘場』を後にする……。

大きな男と金髪の男が、窓からはいる朝日に照らされて静かに永眠した部屋を……。

通路の窓辺から、朝日が入り込んできたので、夜中以上に移動には警戒しなくてはならない。

葉月達が、身をかがめながら3階の通路を走り抜けて……

二階へ降りる階段に辿り着くと……

『待っていろ!』

達也とサムが先頭になって、壁の角から階段下を警戒……。

『追い込まれる前は、階段の角に敵が結構いたんだ』

後ろに控えた葉月に小池がそっと教えてくれた……。

だから──サムと達也の警戒は半端ではなかった。

まず……サムが勇敢に銃を構えながら……階段を一歩降りる。

その後を……達也が壁から見下ろす。

葉月も『いざ』と言う時に備えて、再び胸から銃を取りだした。

『いくぞ!』

達也が手合い図を送ってくる。

サムから『OK』のサインが送られてきたようだった。

階段を二階へと難なく降りた時……

『!!』

二階の通路に、幾人かの迷彩服を着た男が倒れていた。

「どうりで……あれだけいた敵が静かだと思った……」

さらに──

『ガチャ!!』

二階のある部屋の入り口から、銃口が姿を現して葉月達一行に向けられたのだ!

しかし……

「──! フォスター隊の??」

同じ紺の戦闘服を着た男が一人……警戒を解いて部屋から出てきた。

「あ……二陣の……」

サムとその男が顔見知りなのか……そこで顔をつきあわせた。

「無事だったのか……良かった……どうした? フォスター隊長は??」

「予定通り……復旧のために外に向かった。

俺達は、犯人の目をくらますために今から『電話交換室』で『ダミー起動』をする事に……

ミゾノ総監からそう聞いていないのか??」

「いや──俺達の隊長は、今、総管制室の入り口で『機会』を狙っている所だ。

その間に……邪魔なネズミを手分けして追いかけていたところさ……

解った……隊長に確認を取る……」

「そうか──それで、敵の人数がだいぶ減ったのか……」

二陣の男が、口元のマイクに話しかけようとしたところ……葉月と目があった。

「──その……女性? は?」

「ああ──総監のお嬢様で……」

サムがなんだか、言い難そうに葉月を紹介すると……

二陣の男性はかなり驚いた表情を浮かべたのだ。

「えっと──たしか……空軍指揮でマルセイユに帰ったのでは?」

葉月は自分がやりだした事とはいえ……『めんどくさいなぁ』とため息をついた。

「そうよ。マルセイユに帰る振りして……父の命令で単独潜入したのよ」

それを聞いて彼は益々……驚いた顔を……。

「実は……捕らえられていたところ……彼女に助けられて……」

サムの小さな呟きにまたまた……二陣の彼は驚いたのだ。

「一人で!?」

「父に聞いて」

葉月が冷たく言い放つと……将軍の娘故の『畏怖』なのか……

それ以上はその男性は追求はしなかった。

「父から二陣のフロリダ隊に報告が行っているはずよ。

隊長と確認を取って……私達は今から敵がここに目を付けるように

『爆破装置』をセッティングするの。

敵がここに気が付いて向かってくるところを二陣が捕らえるか……

人質第一の救出で、犯人を逃してもここに惹きつける計画よ」

「わ……解りました……。隊長と確認をとります……」

彼が大人しく隊長と通信を取るのを葉月は見守った。

「た、確かに……。あなた達の『ダミー起動』が始まって……敵を動かすって事ですね?

その様子を見て……敵を追いつめるとのことのようで……

まず突入の経過具合で、後でフォスター隊に応援をよこすそうです……

では──私も突入隊に戻るよう指示が出たので……これで……」

二陣の彼は、葉月に敬礼をしてサッと走り出した。

「助かった……うるさいネズミが多少いなくなったようで……作業に集中できる」

小池が倒れている敵を目にしてホッとしたように胸をなで下ろした。

「まだ……これからだぜ。行こうゼ!」

徐々に敵が減ってきたことに意気揚々となりはじめた達也が先頭を切って走り出した。

葉月も……

『あと、少し……もう……少し……終わったら……小笠原に帰れる!』

隼人と過ごす朝日のリビングを……少しだけ頭にかすめて……

サッと達也達の後を付いて走り出す。

『ガチャ……』

静かになった二階……『電話交換室』に無事に辿り着いた。

その少しばかり古びている扉をサムと達也、そっと開けて右、左を警戒。

そこの部屋は先ほど、フォスター隊が捕らえられていた部屋よりかは狭かった。

でも……普通の事務室よりかは大きくて、デスクがいくつか並んでいる。

「よし! 大丈夫だ……入ろう!」

サムの手合い図で、葉月と小池と富永もサッと入り口をくぐった。

電話室もかなり荒れていた……。

「ひどいな──使えるかな?」

小池が心配そうに……電話配線がことごとく『ナイフ』で切られているのを手にとって眺める。

「小池先輩、俺、配線少しばかり持ってきていますよ?」

葉月と同い年ぐらいである富永が背中に背負っていたリュックを降ろした。

「そうか! よし……富永、パソコンが一台ある……それを動かそう!」

「ラジャー……中佐!」

早速、通信側の二人が……作業に取りかかり始めた。

そして……葉月も背負ってきたリュックを降ろす。

『机の下』にセットすることを達也とサムが同意したので……

葉月はデスクの下に潜り込んで『セット開始』

達也とサムはそれぞれ……入り口や窓辺を銃を持って警戒を始めた。

「葉月──大丈夫かよ? しくじって爆破するなよ?」

達也が茶化すように……でも、葉月にそんな事出来るのかどうかと時々覗き込みにやってきた。

「なによ! 特校でそれぐらい達也だって習ったはずよ?」

「習ったけど専門じゃないし……お前、良く覚えているな?? 全く」

(そりゃ……お兄ちゃまに手ほどき受けたんだもの)

葉月は昔、純一から教わった配線を組んで……タイマーをセット。

でも……まだ起動はしない。

「小池のお兄さん? どう??」

葉月が机から出てくると……富永を従えて小池がパソコンの配線を修理しているところ。

「ああ、どうやら動かせそうだ。富永……電源入れてくれ」

「ラジャー」

配線をいじっている小池の代わりに富永が……パソコンの電源を入れた。

「さて……新・システムは既に投入しているけど

それとは別のプログラムをそれとなく打ち込んで……

『ここですよ』って教えないといけないんだよな?」

「先輩──! 電源入ったよ!」

富永が小池にそう報告……。

「よっしゃ……始めよう……」

小池がパソコンデスクの椅子に座り込む。

葉月と富永は、小池の背中からその作業を見守る……。

「アンプを使わずに、基地内電流を使って電源が入っただけで

おそらく……管制室にもばれると思うけどね……」

富永がシステムらしく葉月にそう教えてくれた。

「でも……ここでプログラムを打ち込んでいると思わせないと……

敵が欲しくてたまらないのは『新・システム』だから……

これが……立て籠もっている犯人をおびき出す『餌』ってワケか

テキトーに偽プログラムでもそれなりに打つとするか……」

小池がそう言いながら……ウィンドウを一つ開いてパチパチと

葉月には解らない『英数字』を打ち込み始めた。

「外固めの敵も、二陣がだいぶ片づけたみたいだから……

後は総管制室で立て籠もっている『ボス』が手薄になった事に焦って……

乗り込んで来るって事かな?」

サムが窓辺を警戒しながら呟いた。

『犯人は俺に背格好が良く似た……黒髪の男だ』

葉月は純一が教えてくれた犯人像をあまたに描く……。

『林』……その文字を書いてくれた手のひらを見つめる……。

(そいつと鉢合わせない事を祈るわ……)

葉月は義理兄が持たせてくれた『家宝』を隠している胸元を『ぎゅっ!』と握りしめた……。

『こちらは作業開始したました、二陣の隊長にも報告して下さい』

葉月はフォスターにそう報告。

『わかった……二陣部隊の隊員に会わなかったかい?』

どうやらフォスター達も二陣の男達と遭遇したようだった。

「会いました……敵がだいぶ片づいていて……」

『こっちもだよ……今度はなんなく一階に降りてこられた……。

コイケ君が始めたならそろそろ敵の目に付くだろうね?

それでは、今から一気に外の発電所に向かうよ……

二陣隊長にも報告する……グッラック!』

「グッラック……フォスター中佐……」

そこで、彼との通信は切れた。

「フォスター隊長も二陣と会ったみたいよ? 今から外に出るって!」

葉月の報告に……サムと達也が窓辺に近寄る……。

葉月もそっと窓の外を見つめた……。

「お! 出てきたぜ!? 行け行け♪」

達也が紺色の男達が、明るくなった空の中素早く移動しているのを確認。

それでも、何があるか解らないから……本能なのか?

遠くの仲間を守るようにサムと達也は銃なんか構えたりして……

仲間達の周りに何もいないか息を止めて警戒しているのが葉月にも解った。

「どうかな? お嬢……もう少しここで打ち込んでいた方が良いかな?」

「二陣から敵が飛び出してきたって報告をくれるまで頑張って……!」

敵は徐々に追いつめられ始めていた……

『どうか……無事に終わりますように……』

葉月はそっと胸ポケットにしまい込んだ『へその緒』を握りしめたのだ……。