★ 番外編『氷の瞳』での 大晦日、フランク家での続き。

  泊まることになった隼人とジョイの同室での『寝付き前の会話』
  『少女時代』の最後に書いていたのですが取り留めなく、長くなってしまい(笑)
  収集がつかず、区切りが悪くなったので削ってしまった部分です^^;

   では……同室男同僚同士の些細な会話。。お楽しみ下さい(?)

                                         霧生

 〜氷の瞳 幻のおまけ 〜

 細川が酒盛りの席から抜けて……若者たちもお開きにすることに……。

隼人はジョイと一緒に二階の部屋に案内された。

ジョイが白いシャツを脱ぎながらネクタイを緩める。

なんと……部屋にシャワー室があるというたいそうな作りの部屋で

『ホテル並み』と……隼人は驚いてしまったが……。

ジョイは慣れているのが悠々と落ち着いていた。

ジョイが先にシャワーを使って、それから隼人も拝借……。

二人でバスローブ姿になってツインのベッドそれぞれに腰をかけて

さっぱりした清涼飲料水で一息ついた。

「今日のお嬢……可愛かったねぇ」

「へ?」

あれだけ葉月を散々からかっておいて急に弟分が

しんみり呟いたので……隼人は眉をひそめた。

だが……目の前の金髪の青年は、真剣そのものだった。

「俺。からかっちゃったけど……お嬢がああやって綺麗にお洒落すると

ホッとするんだよね〜」

「そうなんだ……マンションでも結構……女の子らしいけど?」

「え? そうなの?」

「そうなのって??」

「シャツにジーンズとかが多いじゃないお嬢」

「??? そうなの? 結構スカートとかワンピースだよ?」

「ああ。たまにはそうしているみたいだね?」

「たまにはってジーンズの方が『たまには』だけど??」

「マジ!?」

ジョイと会話がかみ合わない上に、驚かれて隼人の方がおののいた。

「へぇーー!! 今日だって何も言わなくても女の子らしくしてきたから……

スーツを着てきた隼人兄がお説教の一つでもしてやっと着てきたのかと??」

「俺……なにも強要なんてしていないよ。どうゆうこと? それ……」

隼人の返事に、ジョイは益々驚いたようだ。

「だってさ! お嬢って……俺達がプレゼントした服も滅多に着ないんだよ?」

「そう? お母さんがくれた服は気に入って着ているって言っていたよ?」

「気に入っても……外に出るときはあまり女の子らしい格好しなかったのに!

ジーンズにセーターで平気でお呼ばれにも来ちゃってさ。

ロイ兄がいっつも渋々お説教したり……

美穂姉ちゃんが洋服買って無理矢理着せたり!

皆で煽らないと、ぜんぜん女っ気ないんだもん!!」

「ああ。 そう言えば今日着ていたワンピースはお姉さんからのプレゼントだって」

「ああ! あの服! 姉ちゃんがあげた物だったのか!

でも! 誰にも煽られずに女の子らしくしてきたのは意外だよ!」

「そう? お兄さんに叱られるからって『仕方ないわね』って感じだったけど?

それに……彼女、フランスでも女性らしい格好はオフではしていたけど?」

『へぇ……』

ジョイはただ、ただ驚いて面食らいながら飲料水を飲んで一息。

「誰だろうね? お嬢をあんなに女の子らしくしちゃっているのはぁ」

『ニヤリ』とジョイのいつもの悪戯っぽい青い瞳に見つめられて

隼人は『ドッキリ』

「って。俺じゃないと思うけどなぁ? だって出逢ったときから彼女……変わらないし」

「あーあ! 酔いも醒めたのに熱い熱い!! 風呂上がりのせいかなぁ!」

ジョイがバスローブの襟元をバタバタ仰いで、隼人をからかう。

「いや……だから、本当に俺何にも言ってないし、していないって」

「どうしてかなぁ? 不思議だなぁ? 何がお嬢をそうさせているんだろうなぁ?」

「アレじゃないのか? ロベルトが結構……女の子らしくさせていたみたいだけど?」

「ええ!? どうゆうこと??」

ジョイが『興味津々』また、青い瞳を輝かせて首を突っ込んでくる。

「え? 彼女……彼の自宅にいるときは『女の子らしかった』って言っていたし」

「へぇ! お嬢!あの官舎に通っていたんだ! それも意外!!」

「やめろよ……もう……」

隼人の中でも、葉月の中でも……

『ロベルト=ハリス少佐』との恋話については心に整理はついていたのに……

ジョイから『お嬢は変わった。いつから変わった??』と言う話に……

『隼人兄が変えた』は照れくさくて……天の邪鬼に『ロベルト』の話をしたのに……

確かに……隼人と出会ったときは彼女はそれなりに女性らしかった。

『じゃぁ? いつからそんな女性らしい格好を自らするように?』

という疑問になって……急に『隼人と出会う少し前。では、ロベルトに違いない』

という……確信が隼人にもジョイの驚きようで解ってしまった。

だから……急に『終わったはずの嫉妬心』が湧いてしまった。

「確かにねぇ……ハリス少佐は『お洒落』だもんなぁ……。

男一人暮らしの時でも、いつもカッターシャツなんか『パリ』としていたし。

『汗臭い、男臭い』ってないぐらいなんだか上品でさぁ……。

香水まで付けちゃって! お嬢がもしかすると意識したのかもねぇ……

でも、そこで元の『ボーイッシュなお嬢』に戻らなかったって事は……

『仕上げ』は『隼人兄』がしたんだね〜〜。すごいよ!」

ジョイはロベルトも持ち上げるし、隼人も持ち上げるし……。

隼人としては『複雑な心境』

(うー。たしかにロベルトはお洒落だモンなぁ……

葉月と並ぶと美男・美女ってかんじだしさぁ……)

葉月にどんな風にして、女性らしさを教え込んだのか隼人としては……

『心外』……気になるところとなってしまった。

でも……

「アイツ。 そんなにボーイッシュだったのかな? ハリス少佐もそう言っていたけど」

「あーあー。そりゃ、もう!! 俺、訓練校もお嬢と一緒だったけど

いっつも『兄弟』って思われるくらい、男の子そのものだったからね。

言葉遣いだっていまみたいな『お嬢言葉』じゃなくてね!

男の子そのもので、登貴子ママなんかシャツにジーンズのお嬢に

ほんっと頭痛めていたんだから……」

「本当に……そんなだったのかよ? 信じられないな」

そんな葉月も見てみたいような気もするし……

でも……隼人としては今の自宅での愛らしい葉月は気に入っているし……

またまた『複雑な心境』……飲料水を煽った。

「入隊してから言葉遣いも女の子らしくなって……

髪も伸ばして……いざというときは女の子らしい格好してね……

遠野大佐がいた頃は……髪が長くてもまだ、ちょっと『男っぽい』感じだったけど?」

「ふーん。。 まぁ、想像できないこともないか……

時々……少年みたいと思うこともあるモンなぁ」

「まぁ……なんていうのかな。 お嬢は最近特に変わったよ……

大切にしてやってよね……本当……今日、ロイ兄もすごく、ご機嫌だったし。

隼人兄の男の株……上がったんじゃないの? 良かったね♪」

ニコリと……ジョイも心から嬉しそうに微笑んでくれるが……

『俺、本当になにもしていないのにな?』

取り立てて……彼女に『女らしくしろ』と強要したこともなかった。

でも……それが隼人という男の為に変わったというなら……

それは……やはり『嬉しい』としかいいようがないのだが……

(いや〜……でも、まだまだなんだよなぁ……俺が求める葉月って)

皆が『変わった! 変わった!!』とは言っても……

隼人が求めている『女性・葉月』はまだほど遠い……。

見た目じゃなくて……中身のことも彼女から女性らしさは引き出したいところなのに

『俺の……独りよがりな贅沢な願いなのかな??』

隼人はそう……ため息をついた。

『オヤスミ〜隼人兄』

『おやすみ ジョイ』

二人揃って明かりを消して……ベッドに潜り込んだ。

ジョイは飲み過ぎたのかすぐに寝付いたようだった。

隼人は一人……高い天井を見上げて……

そっと……『封印されたはずの葉月のあるべきだった少女時代』に想いを馳せた。

あの……ロイの娘・愛里のように……

きっと可愛らしかったに違いない。

今日のように……大人達に可愛がられて幸せな日々を送っていたに違いない。

あんな楽しそうに微笑んで……

あんなに可愛らしく大人に甘えて……

『俺も……そんな存在にいつかはなれるのだろうか??』

葉月が心を許しているのは幼少期の大人達だけ。

皆は隼人が葉月を少しずつ変えていると言うが……

今のところ、隼人の感触では『まだまだ』なのである。

せめて……外から来た人間だとしても隼人にだけにでも

心を開いてはくれないものだろうか??

隼人はまた深いため息をこぼして……そっとシーツにくるまった。

                            =終=

 

★ 昨年、綴ったまま残して、一時、『おまけアップ』を考えていたのですが
   時期を逃し……(笑
   まぁ、ただいま(TOKIOプロローグ)の状況に引っかかる物があったのでつい。。